名古屋高等裁判所金沢支部 昭和28年(う)33号 判決
原判決の擬律を検討するに、原審は、「被告人の判示所為中、第一の(一)は刑法第二百四条に(二)は同法第二百四十九条に、第二は銃砲等所持禁止令第一条第二条に夫々該当するところ、以上は同法第四十五条前段の併合罪であるから、同法第四十七条第十条に従い、重い判示第一(二)の恐喝罪の刑に法定の加重をした刑期範囲内で被告人を懲役二年六月に処する。」旨判示しているものであることを認め得べく、これに依れば、原審は、判示第二の事実に対し、銃砲類の所持を禁止した銃砲等所持禁止令第一条及び違反行為に対する罰則を規定した同令第二条の各規定をそれぞれ挙示するに止り、同法に所謂「銃砲」に該当するものの範囲を具体的に示した、同令施行規則第一条第一号の規定を、判文中に明示していないことが明かである。思うに、銃砲の意義如何は銃砲等所持禁止令違反罪の犯罪構成要件の一部をなすものであるから、同令違反の罪に対し、いやしくも、罰則の適用を為さんとするに当つては、同令第一条第二条を適用するの外、すべからく叙上施行規則第一条をも、同時に併せ適用すべきであることは此処に改めて言うまでもない。
しかしながら、また、翻つて実務処理の見地より考えるに、判決中に摘示されている認定事実、若しくは判決中に挙示援用されている証拠等より、裁判所が、当該法条をも照合適用した上、その趣旨に即して判決したものであることを容易且明確に知り得るに於ては、当該法条中に刑罰それ自体を定めるものでない限り、たとえ、前示のような、犯罪構成要件の一部を包含する規定であつても、判文中にその適用を常に必ずしも明示する必要がないと解すべきである。これを本件について見るに原判決挙示の各証拠を綜合するときは(一)被告人が所持していた銃砲は、普通に「九四式」拳銃と称せられている銃砲類の一種であつて、(二)火薬の爆発力を利用して弾丸を発射するものであることは勿論、(三)所持の当時、弾丸発射の機能を完全に備えていたものであること、すなわち、被告人が所持していた銃砲は前記施行規則第一条第一号の定める要件を悉く充足するものであることを容易且明確に認定し得べく、また従つて原審は言うまでもなく、認定事実を同法条に照し、その趣旨に即して、被告人に対し原判示の如く有罪の判決を為すに至つたものであることを明瞭に看取することが出来る。なお、同法条には刑に関する定めが存しない。そうして見れば、判文中に右施行規則第一条第一号を明示しなかつた原判決は、その判示方法に於て或は粗略の譏りを免れないにしても、必ずしも、これを目して判決に示すべき法令の適用を遺脱したものとは認め難い。